• 中村勘九郎が歌舞伎で「恋ダンス」を踊ったことは現代の大衆演劇としての立ち位置を取り戻そうとする姿勢の表れである。


    東京・歌舞伎座で行われた「第38回俳優祭」の模様が、4月30日(日)夜9時からNHK Eテレで放送されたのだけど、中村勘九郎さんが「恋ダンス」を踊ったことが話題になっていますね。

    恋ダンス

    逃げるは恥だが役に立つ」で星野源が作詞作曲し、ガッキーと踊った「恋ダンス」はフィギュアの羽生くんも休憩中に踊ったり、YouTubeでも踊ってみる人が沢山いたり、最近では珍しいくらいに、世代を問わず受け入れられたブームでした。

    踊りが可愛いとか、ガッキーが可愛いとか、星野源がカッコいいとか、色々理由はあると思いますが、2016年を語る上で外せない話題でしたね。

    歌舞伎でその「恋ダンス」が踊られたことで盛り上がっています。

    歌舞伎は大衆娯楽

    もともと、出雲阿国がエロい演出をして、遊女としての客を捕まえたようなかぶき踊りや、歌舞伎という語源が「かぶきもの」からきているように、目立ちたがりが茶屋で一騒ぎ起こすような劇をやったりするようなものであり、以前からあった能に比べて、大衆娯楽でした。

    時代が下って、武家や公家の話題を扱った時代物と、町人や庶民の話題を扱った世話物とが生まれましたが、この世話物こそが、時事風俗をパロディして、みんなで楽しんでいたものなんですよね。

    歌舞伎というと古臭いものと思いがちですが、意外に現代でも、時代の感性に合った演目もやっているということです。

    中村勘九郎さんが「恋ダンス」を踊る意味

    しかしまあ、型破りですよね。
    "真似"ではなく、あくまで歌舞伎の型をベースにしたパロディであり、勘九郎さんのモノにしているダンスでした。

    能、文楽、歌舞伎と、日本文化のそれぞれは伝統を引き継ぐことと、新しい挑戦をすることのバランスに悩まされるところではありますが、こうやって、うまく時代とともに変化していくチャレンジができる勘九郎さんは素晴らしい歌舞伎役者ですよね。

    まとめ

    きっとこれからも、世の中の話題を取り上げた演目をやってくれると思いますし、歌舞伎への関心も高まるでしょう。

    ぜひ注目して見てみてほしいと思います。

    AI時代を生き抜くための知識の身につけ方。精読か多読かどちらがいいのかについて。

    精読か、多読かについて思うこと。


    私は本を読むことがそもそも楽しいので、読書がまったく苦にならない人間で、年間少なくとも300冊くらいの本は読んでいます。

    仕事においても、プライベートにおいても知識が役に立つことは多いのですが、1冊を精読すべきか、10冊をザッと読むべきか、のような質問を聞かれることがあるので考えてみました。

    1.入門書を5冊、5回ずつ読む

    新しい分野の本を読むときは、入門書を読むべきです。

    マンガでわかる!とか、まとめ!とか超初心者向けに分かりやすく書いてある本を5冊程度選んで、読みまくります。

    知識の習得のためにはまずは語彙に慣れる必要があります。

    論理的に書かれているからといって、それが自分のレベルと合っていなければ頭に入って来ません。

    サルでも分かるとか、小学生でも分かるように書いてあるレベルのものを何度も読んで、ストーリーで言葉を覚えましょう。

    自分を過信して「俺はこれくらいの本を読めるんだ」とちくま新書岩波文庫などを初めから読んでも多くの人はチンプンカンプンです。

    たまに、「電車でこれ読んでたらかっこいいと思われるかな」と言う人がいたりします。
    読書をファッションとして扱ってるわけです。


    ピケティの『21世紀の資本』もかなり売れたようですが、ベンチャー企業の若手社長なんかが、読めもしないのに棚に飾ってアピールのために買っていたと言う話も聞きました。


    学者が書いた本であれば、情報の正確さや質も高いですが、その情報の真偽に疑問を持つためにも基礎的な理解は不可欠です。


    5冊くらいを選ぶようにしているのは、分かりやすいシリーズの場合、作者によって省略する部分が違ったり、言葉の選び方が違ったりするので、バランスよくベースを作るために、複数冊読むと言う意味です。

    2.体系化されていて、詳細まで説明されている本1冊を読みこむ

    大体の基礎知識が頭に入ったあたりで、本の良し悪しが分かるようになってきます。

    その時に、全体的に体系化されていて、知識的に網羅されている本をバイブルとして選びましょう。

    これは精読で、気になるところは音読をしてもいいと思います。

    精読といっても、のんびり読むのではなく、スピードを意識して、何度も読むことが大事です。


    エビングハウス忘却曲線は有名な話ですが、人は覚えたそばから忘れていきます。
    エビングハウスの忘却曲線で分かる、最適な復習のタイミング

    20分後には42%忘れる
    1時間後には56%忘れる
    9時間後には64%忘れる
    1日後には67%忘れる
    2日後には72%忘れる
    6日後には75%忘れる
    31日後には79%忘れる

    1.何かを学ぶ時、その知識があなたにとって意味のものであったり重要なものであったりした場合、暗記は楽である。逆にその内容があなたにとって意味のないものであれば、すぐ忘れる。

    2.学習に時間をかけると、吸収できる情報量も増える

    3.一度目の学習より二度目以降の学習の方が簡単になる。復習を重ねるごとに忘れにくくなる。

    4.一度にたくさん学ぶよりも、時間をかけて何度かに分けて学んだ方が、学習効率は上がる。

    5.学んだ直後から物忘れは始まる。最初は一気に忘れ、次第にゆっくりと忘れるようになる。

    つまり、忘れることを計算のうちに入れて、何度も何度も忘れた上から上書きしていくことが大事と言うわけです。

    3.数十冊乱読する

    自分の中にその分野のベースラインができた後は、そのカテゴリの本を手当たり次第に乱読しましょう。

    エピソードや具体例、言い回しなどは作者や本によって違います。

    自分が使いやすい言葉や理解しやすいストーリーで、引き出しを増やすことができます。


    新しい発見があれば、その分、知識は補強されます。

    この段階では、著者の意見に対して、疑問を持つことができたり、「それは違うだろ」とツッコミを入れたりできるようになって来ます。

    そうすると、1つの分野で専門家レベルにまで知識量は達したとみなして良いのではないでしょうか。

    目標としては100冊は目指したいところです。

    大富豪になるには、良い本を大量に読むこと

    以下のサイトによると
    ビル・ゲイツなど、大富豪の読書量は、年収300万円の人の38倍「でも、有名になりたくて、仕方がないミーハー著者の本を読んでも何も変わらない。」 | リーディング&カンパニー株式会社

    ある調査によれば、20代、30代のビジネスマンは1ヶ月平均0.26冊の本を読むのに対し、30代で年収3000万円の人は平均9.88冊の本を読むそうで、その差は約38倍ですが、アメリカの調査でもビル・ゲイツウォーレン・バフェットのような大富豪が1日30分以上本を読むのに対して、年収300万前後の人たちの中で1日30分以上の読書をしていたのは、たったの2%しかいなかったそうです。

    日本マイクロソフトの代表を務め、ビル・ゲイツと共に働いた成毛眞さんは、周りの経営者やクリエティブな人の中で、本を読んでいない人はいないとして、ビル・ゲイツのような優秀な人達に共通していることは、「良い本」を「大量」に読んでいることだと述べています。


    とあり、

    「今すぐ役に立たないことを命がけやっている人が、本当の日本の宝」と言われるように、歴史、文化、料理、そして経営学の論文など、全く年収アップなどに関係ない本をバラバラに読んでいくことで、様々なものが混ざり合い、その知識が金銭的にも、生活的にも人生のクオリティーを上げていくのではないかと思います

    と、続けています。


    お金持ちになるには、社長になるのが一番であるというのは当然として、社長の仕事はビジネスを見つけることだったり、上手くいかないビジネスを切ることだったりします。


    情報感度を高めること、情報の真偽を判断すること、乗れる波なのか決断すること、のためには知識が必要になることは明らかです。


    今後、AIやネットの発達で「知りたいことはネットに全て載っているのだから、わざわざ覚えておく必要はない」と言う人がいますが、自分の頭で大量の情報の中から信頼できる情報をピックアップするためには、自分の中での判断基準が絶対的に必要になって来ます。

    ネットも役に立つ

    NAVERまとめや、分かりやすくまとめてある、ウェブ上の記事も、ある程度は役に立ちます。

    それは、初心者のうちの語彙力を得るための時期です。


    ただ、本は著者がいて、編集者がいて、綿密なチェックの元に出版されていますが、webでは、なかなかそうはいきません。

    検索上位に上がる記事は、人の目に近いGoogleアルゴリズムによって、質の高いものがありますが、客観性に欠けていたり、言葉足らずだったりする場合もあります。


    それに、webで検索できる程度の話であれば、誰でも得ることができる情報であり、それほど価値を持ちません。

    まとめ、

    というわけで、読書のススメでした。
    1.初心者向けの本を複数冊繰り返し読む
    2.信頼できる1冊を見つけて精読する
    3.同カテゴリ内の本を手当たり次第に乱読する

    です。

    【書評】接客業、サービス業、おもてなし産業に関わる人が読んでおきたい本12冊の感想とオススメ。

    こんにちは。

    前回は11冊の接客本を紹介しました。

    前回に続いて、サービス業が読んでおきたい本を12冊紹介します。

    感想とオススメ度も書いていますので、参考にしてみてください。

    1.執事が教える至高のおもてなし

    著者は現役執事の新井直之氏。
    「至高のおもてなし」とは〝相手がどんな人で、どんな状況であれ、臨機応変に究極のサービスを提供し、お客さまを感動させてしまう方法〟

    職業としては珍しいモデルの執事としての目線でおもてなしの極意を語った本。
    心の込め方、無理難題を解決した方法などについて語られている。

    オススメ度2

    2.日本一の添乗員が大切にする接客の作法

    ツアーコンダクターとして初めての国土交通大臣賞を受賞した著者。

    トラブルのないトラベルはない」という言葉を胸に抱き、お客さまがどうしたら笑顔で帰ることができるかを考え続けている著者の真心がうかがい知れる。

    オススメ度2

    3.ディズニーと三越で学んできた日本人にしかできない「気づかい」の習慣

    「自分が大切だと思っている人に対して「この人は何が好きなんだろう?」「何をしたら喜んでくれるだろう?」と考え、実際にしてあげることが気づかいの本質である。

    三越でスキルを学び、ディズニーで仕組みを学んだ著者の体験談に基づいて書かれた本。

    オススメ度2

    4.お客さまが心を開く「おもてなしの鍵」

    お客様に「また利用したい」と思ってもらえるには、どのようなことに気をつかい、実践していけばいいのか。

    日本とフランスの5つ星ホテルで勤務、指導の経験がある著者の体験談が綴られた本。
    ホテル業、接客業なら読んでおいて損はない本。

    オススメ度2

    5.お客様に選ばれる人がやっている 一生使える「接客サービスの基本」

    ANAキャビンアテンダントが書いたおもてなし本。

    仕事も人間関係もうまくいく気遣いのキホン、会話のキホンが分かりやすい例えを用いて説明されている。

    接客業初心者の時に心構えとして読んでおきたい

    オススメ度2

    6.誰からも信頼される 三越伊勢丹の心づかい

    日本初のデパートメントストア宣言をした三越の日比翁助が、明治時代に記した『商売繁昌の秘訣』という書物には、お客さまに対するきめこまやかな「心づかい」の極意が書かれていた。

    300年続く老舗デパート、三越伊勢丹の接客の心得や、マネジメントが知れる1冊。
    企業研究にも役立つ。

    オススメ度3

    7.一流のおもてなし術 メートルドテル宮崎辰の流儀

    第一印象を良くする「身だしなみ」のコツや、美しい「立ち居振る舞い」の基本を説明した本。

    人をどのようにもてなすかを、一流のサービスマンとして語っている。

    スーツを綺麗に着るには、相手に喜ばれるお店選びをするには。など、知りたい人は一読。

    オススメ度2

    8.接客の一流、二流、三流

    JALのCAが書いた、接客のレベルについて。

    3流は基本動作ができること、2流はよりレベルアップした高度の知識や経験を駆使するもの、1流は人間力が勝負で、お客様の一挙手一投足から判断して臨機応変に対応する。

    1流の接客がしたいなら、読んでみると視野が広がる本

    9.ディズニーキセキの神様が教えてくれたこと

    優しい言葉で書かれているのでさらっと読めて、あたたかい気持ちになれる。人を喜ばせるのって楽しいと心から思えて来る一冊。

    ディズニーのダンサーに憧れる少女の物語が素敵だった。

    接客に疲れた時にどうぞ

    オススメ度2

    10.リッツ・カールトン超一流サービスの教科書

    ウオルトディズニー、ブルガリなど世界的なブランド企業でサービスのエキスパートとして活躍し、
    リッツカールトンでは人材教育とリーダー養成の機関を設立したトレーニングのプロが、
    あらゆる業界でつかえる「サービスの原則」を明かす。

    と言うだけあって、本書は、誰にでも習得できる実行法が、11のチャプターに分けてサービスの原則を惜しみなく公開した「超一流の教科書」になっている。

    飲食店、サービス業、ホテル業の人には必読の書。

    オススメ度5

    11.ディズニー感動のプロフェッショナルを育てる

    I.C.A.R.E.(アイケア)の5原則で極上のサービス精神が育つ!
    本家ディズニーで人材育成プログラムを作成した著者が明かす!
    組織の人材育成だけでなく、接客・サービスの現場でもすぐに役立つノウハウが満載!
    ディズニー水準の「感動体験」を実現するためのチェックリスト付き。

    書による
    I.C.A.R.E.(アイケア)の5原則とは
    I 印象(Impression)
    C つながり(Connection)
    A 考え方(Attitude)
    R 応対(Response)
    E 最上のもの(Exceptionals)

    1つ1つのサービスを卓越したものにして、さらに積み上げていくことで、他の追随を許さない感動のプロフェッショナルに至ることができる。

    参考書として一冊は持っておくべき本。

    オススメ度5

    12.外国人観光客をリピーターにする 世界基準の「接客サービス」

    キャビンアテンダントの実績、豊富な海外渡航経験から、日本のおもてなしを客観的に分析し、外国人観光客をリピーターにするための戦略、戦術について書いた本。

    なぜ日本のおもてなしは外国人に伝わりにくいのか?

    外国人はどんなサービスを求めているのか?

    これが分かるだけでリピーターに差が出る。

    外国人ターゲットのサービス業や、インバウンド事業、エアビーを考えている人にもおすすめの一冊。

    オススメ度4

    以上

    参考になれば幸いです。

    こちらもどうぞ

    苫米地式コーチングを独学する人にオススメしたい無料で分かりやすい記事3選

    こんにちは、きつねです。

    苫米地式コーチングを独学で学んで3年になります。

    苫米地式コーチングを学ぶ時に大きな壁になるのが独特な用語。

    今まで聞いたことのない、外国語のような(現に英語が元ですが)用語を覚えるのが難しく、また怪しく聞こえるため、苫米地式コーチングを批判する人や、理解できずに終わってしまう人が多いのだと思います。


    ゴール、ゴール設定、抽象度、ドリームキラー、セルフトーク、ネガティヴセルフトーク、エフィカシー、コレクティブエフィカシー、アファメーション、have to、want to、マインドセット、RAS、言語、非言語、現状、IVX=R、ゲシュタルトなどなど。

    これだけでもまだまだ少ない方です。

    私は苫米地氏の本を中心に独学で苫米地式コーチングを学んだので、コーチに膨大なお金を払うということはしませんでしたが、当時の現状からは簡単に抜け出すことに成功しました。

    1回のセッションに10万円や20万円支払うというのも、お金に関するスコトーマを外すためのワークの一部ではあるようですが、自分で外せるに越したことはないですもんね。

    というわけで、苫米地式コーチングを独学する際の助けとなる、用語を解説した記事を3つ紹介します。

    本を読んでもわからない部分や、本を買うお金がない(言い訳にしかならないと思っていますが)人はぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

    1.金子裕典氏

    情報量としては少なめで8個の重要用語を説明したページ。
    音声付きなので、作業中に聞き流すことも可能。

    ただ、説明のための説明がまた欲しいレベルではある。

    サイトの作りはやや古いので、情報が見つけにくいところはありますが、ちゃんと書いてあります。

    2.高嶋芳幸氏

    「科学的な理論に基づいた次世代のコーチングです」というだけあって、主観的表現を抑えた客観的な用語辞典的なページ。

    私はメルマガも購読していますが、教育者らしい丁寧な解説で、分かりやすさはピカイチと言えます。

    余談ですが、イケメンです。


    3.中原宏之

    用語を整理しながら体系的に苫米地式コーチングのさわりを理解できるページ。

    かなり網羅的に、詳細まで分かりやすく、解説されているので、ちょっとした小冊子にできるくらいにはたっぷり。

    2.3日読み込めば用語についてはかなり理解が深められます。
    ウェブサイトで、これだけ作り込んであるコーチの方は珍しいですね。

    まとめ

    お金がなくても独学はできますよ!

    【話題】日本の厚生労働省が発表している2035年までの政策。未来の働き方を考えるために。

    こんにちは、きつねです。


    実は今更の話になるのですが、去年の8月に、厚生労働省が、2035年を見据えた政策を発表していました。

    まだ読んでいない人は必ず目を通しておいた方がいい文章です。

    議論のためのデータや論には目新しいことはありませんが、今後、政府が何を考えて政策を行なっていくのかが予測しやすくなります。

    目次を抜いて、全35ページにわたって書かれていますが、まとめの部分だけ引用で抜き出しておきます。


    6. 2035 年に向けての提言


    最後に今までの議論をまとめるとともに、2035 年に向けて政策の方向性を提 言しておくことにしたい。

    1 技術革新は、大きなチャンスをもたらす

    AI を中心とした技術革新は、今後の経済の構造を、急速かつ大きく変える。 これは働くすべての人々に大きな恩恵を生み出し得る。それは、働く場所に関 する物理的な制約がなくなり、多くの仕事が、いつでもどこでもできるように なるからだ。また、IT やロボット等をうまく活用することで、障害などにより 今まで働くことに制約があった人々が、より自由度をもって働くことができる ようになる。すべての人が、自由で自律的であるとともに、より充実感のある 働き方ができるようにするチャンスだ。

    また、この技術革新は、日本経済にとって大きなチャンスにもなる。少子化高齢化による人口減少、労働力人口の減少、過疎化という日本が直面している 課題の解決に大きく寄与し得るからだ。

    その恩恵は単に都市部だけに現れるわけではない。ロボットの活躍等は、過 疎化や高齢化が進む地域にこそメリットがある。またいわゆる IT 産業にだけ恩 恵や変化が及ぶわけでもない。農林水産業等は、まさに AI の導入による生産性 や収益性の向上が大きく期待されている分野であり、今まで IT とは無縁だった 産業にも大きな革新と発展を生み出すと期待される。

    2 チャンスを生かすには、新しい労働政策の構築が不可欠

    しかし、そのような恩恵を、働くすべての人、そして経済全体にもたらすに は、技術革新や産業構造の変化に合わせて、あるいはそれを先取りする形で、 新しい労働政策を構築していく必要がある。働き方の構造が、技術革新によっ て大きく変化していくし、いかざるを得ないと考えられるからだ。言い換える と、新しい労働政策を構築できない限り、人々が十分に活躍することはかなり 困難になり、そうなれば日本経済は、チャンスを生かすことができず、大きな 困難に直面することになってしまう。

    また、そもそも企業自体が大きく変容していくと予想される。変化のスピー ドが速くなることで、企業自体がそれに対応して機動的に変化せざるを得なく なるからだ。極端に言えば、企業は、様々なプロジェクトの塊になっていく。 そのような企業自体の変化に合わせた。新しい労働政策の構築が不可欠である。

    そのためには、本文で詳しく述べているように、働くという活動に対して、 民法(民事ルール)の基本的枠組みによる対処だけでは、何が不十分でどのよ うな手当てが必要かという根本に立ち返った検討も必要である。

    3 働き方の変化に伴うこれからのコミュニティのあり方

    急速な環境変化そして個人の働き方の変化による企業の変質は、コミュニテ ィのあり方にも大きな変化をもたらす。これまで企業が担ってきたコミュニテ ィの役割を、代替するものが生まれてくるだろう。生活を重視する流れが強ま れば、実際に居住する地域コミュニティの役割が再び重要になってくる可能性 もある。

    また、同じ企業で働いているという帰属意識よりも、同じ職種や専門領域で 働いているという共通意識の方がより強くなり、SNS などで疑似コミュニティを 作っていくことになるだろう。

    こうした変化に対応するために、労働組合も企業別・業界別の運営とともに 職種別・地域別の連帯も重視した、SNS や AI、VR などの技術革新も活用した新 しい時代にふさわしい組織として多様な働き方を支援できるよう進化していく ことが求められる。

    4 人材が動く社会と再挑戦可能な日本型セーフティネット

    新しい労働政策を考える上で重要となるのは、自由で自律的な働き方が増え、 人材が企業間を動いていくことを積極的に捉える視点と、やり直しや再挑戦を 可能にするための仕組みを政府が責任をもって整えていくという視点の適切な 組み合わせだ。

    環境が変化し、自身の能力や関心が変わっていく中では、時代の変化に応じ てそれぞれに違う働き場所や働き方が必要になったり、あるいはそれを望んだ りということが当然生じる。特に技術革新のスピードが速い 2035 年に向けては なおさらであり、それを前向きにとらえていく発想が必要だ。

    しかし、それがスムーズに可能になるとは限らず、多くの場合必要な知識や 技能の習得が多少なりとも必要となる。自営的就業者も含め、一度職を失った 人が、単に生活できるというセーフティネットだけではなく、自分自身が望む、 より良い働き方ができるようにするためのセーフティネットを日本の実態に合 わせて充実させていくことが必要だ。

    今後は、やり直しをするための再教育の仕組みをより整えていく必要があり、 個人がそのための職業教育、職業訓練を受けることに対して、財政的な支援を 充実させていくべきだろう。単なる財政支援だけでなく、すべての人が、それ ぞれの事情に合わせて働けるようするためには、教育内容の充実も不可欠であ る。以下で述べる情報開示の仕組みの充実等によって、日本にとってふさわし い再挑戦可能な仕組みを確立させていく必要がある。

    5 働く人が適切な働き場所を選択できるための情報開示の仕組み

    正しい選択は、きちんとした情報と理解の下ではじめて可能になる。働き方 の選択にあたっては、必要な情報が比較可能な形で提供されるための枠組みづ くりが求められる。

    2035 年に自立した個人が多様な働き方を享受するには、契約を結ぶとはどう いうことかといった契約の基本概念の理解がまず必要であろう。それに加えて、 企業など働く場を提供する側が「どんな働き方を求めるか」を正確に提示し、 働く人はそれを見て選択できることが極めて重要になってくる。

    そのための方法としては、例えば、会社ごとあるいは職種ごとに、労働条件 の開示のみならず、働き方に関する「基本姿勢」を明示することが求められよ う。あるいは、各経営者が働く人の「キャリアパス」に対してどう考え、実際 に多くの働く人がどんなキャリアパスを歩んでいるのか、その点についての正 確な情報開示も求められるようになってくるだろう。

    また、こうした働き方に関する情報を、働く人が簡単に入手し比較検討でき るよう、情報が一覧できるウェブサイト等の情報プラットフォームが整備され ていくことも重要だろう。働く人が、必要な情報をワンストップで入手できる 仕組みは、多様な働き方が広がるうえでの重要なインフラであり、その充実は、 一人ひとりが輝くために必要なポイントの一つである。

    6 これからの働き方と税と社会保障の一体改革

    企業と個人との関係が 2035 年においては大きく変わると考えられるため、税 と社会保障のあり方もその変化に合わせた形で構築していく必要がある。

    例えば、男女が共に働くことが一般的になっていくことを考えると、世帯主 が配偶者を扶養することを前提とした家族を単位とする税制や社会保障制度を、 家族が働くことが不利にならない個人単位に置き換えていくことも重要になる だろう。

    税と社会保障の一体改革についてはその必要性が議論され、政策もうたれて きた。しかし、このように、働き方は税と社会保障の問題と密接不可分な重要 な要素である。どれだけ多くの人が充実して働けるかは、税収に大きく影響するし、財政的な支出が、その実現のために必要になってくる面もある。 これからの税制や社会保障制度は、働く場所や時間からできるだけ中立的な 形で整備されるべきである。そうでないと、せっかく働く場所と時間から自由 な働き方が可能になっているにもかかわらず、それを生かすことができない。 働き方に関する変化と多様性をできるだけ妨げないような、税と社会保障のあ

    り方を考えていく必要があるだろう。

    7 早急かつ着実な実行を

    今まで述べてきたように、技術革新を中心とした大きな変化が、働くすべて の人に恩恵をもたらすためには、新しい労働政策を考え、構築していく必要が ある。しかし、法律や制度の変更には、その詳細な検討にかなりの時間を要す ることを考えると、これを将来の課題ではなく、今現在の喫緊の課題として捉 えていくことが大切である。本報告書の方向性に沿って、具体的な施策、体制 および工程表をつくり、早急かつ着実に新しい労働政策のあり方を検討してい く必要がある。

    それによって、いつでもどこでも、一人ひとりに合った自己実現ができ、自 分らしい働き方ができる社会が構築されること、「世界で最も働きやすい場所」 を目標として掲げている日本が、物理的に住んだり、働いたりする場所として、 積極的に選択される世界最高水準の自由度を有した働き方の仕組みが構築され ることを強く望みたい。

    まとめのまとめ

    少子高齢化が進んで、労働人口が減少するよ
    ・AIやロボットの発達で、働き方は大きく変わるよ
    ・企業の役割も変わってくるよ
    ・それにともなって新しい労働政策や、教育システム、セーフティネット、税のあり方、法律をなるべく早く整備するよ

    ということですね。